熊本県立農業大学校の同窓会「耕志会(こうしかい)」のホームページです。  

 
 
 
 
地区理事インタビュー
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耕志会のホームページでは、地区理事の方々の近況や仕事ぶりを取材させていただき、紹介してまいります。
第3回目は熊本市地区の理事をされている古閑敬二(けいじ)さん。
熊本市南区のアクアドームが近くにあり、古閑農園を経営をしています。


1. 自己紹介をお願い致します。
 熊本地区で理事をしています古閑です。なんだかんだ10年以上理事をさせていただいています。46歳になります。
 文徳高校卒業後、熊本県立農業大学校園芸科で、メロン、スイカ、トマトの栽培をメインとした野菜コースに学び、平成2年に卒業の11期生です。
 現在は、両親と妻・二人の息子の6人暮らしです。熊本市南区孫代町で、父から受け継いだ古閑農園の経営をしています。


Q2.仕事内容をお教えください。
 全国でも有数なナスの産地「熊本」ですが、中でも旧飽海郡飽田町では、昔から筑陽ナス(通称:デコナス)の栽培が盛んです。以前は、稲刈りが済んだ11月にナスを植え付けて、田植えが始まるまで栽培してきました。現在では、2,000坪のナス専用のハウスに、8月の中旬頃に植え付けて、翌年6月いっぱいまで毎日収穫しています。

Q3.毎日ですか?大変ですね。
 3反のハウスが1つと、1.5反のハウスが2つあり、一日交代で収穫しています。午前中収穫、午後から交配というパターンです。交配はハウスの中に蜂を飛ばしています。冬場は蜂の交配がうまくいかない場合がありますので、手作業が主になります。
 この地区の農家はほとんどが雇用型経営です。当農園でもパートさんを3名、通年で雇って収穫に当たっていますが、冬場はどうしてもナスの収穫が落ちます。その期間、パートさんの仕事確保のために、ブロッコリーや様々な洋野菜を栽培・収穫しています。それでも、7月から8月の初旬は農閑期になります。この時期は、次のシーズンの収穫のために土に栄養を与え、土の本来の力を甦らせるようにしています。土をリセットするということです。働く私たちもこの時期にリセットしています。


 


秀品率のよい多収の良質太長ナス「デコナス」。



綺麗な紫色の花を交配し続ければ、常に収穫ができる。


奥行き50m。広大なハウスながらも、風速50mの台風にも耐えうる強度を持つ。

Q4.お米は今でも作られているんですか?
 今年は2丁1反で収穫しました。コンバインを保有していますので、よその農家さんの稲刈りを3丁ほど請け負っています。我が家だけでしたら、コンバインの償却を差し引きますと、全く儲けは出ません。ナスの収穫の終わり頃に田植えがあり、稲刈りの頃にはナスの収穫が本格化しているため、この時期は一層忙しいですね。

Q5.跡を継ぐことに抵抗はなかったですか?
 上が姉二人の長男で跡取りです。高校進学では親と衝突しましたが、わがまま言って普通科に行かせてもらいました。同級生の多くは卒業して普通の大学に行くか、会社勤めする時代でした。私も一年くらいは会社勤めをしたいなぁ…なんて思っていました。ですが、農業は嫌いじゃなかったので、どうせ跡を継ぐなら農業のことをしっかり勉強しようと農大に進学。卒業してすぐ就農しました。

Q6.若くして就農されましたが、周りの農家で後継者不足は?
 熊本市に茄子部会という組織がありますが、会員数約170名弱。そのうち半分が40歳以下、逆に会員数が増えている状況です。世間でいう後継者不足は、この地域では聞きませんね。同年代の仲間がたくさんいます。地域の後継者クラブなど、いろいろな組織もあります。その中で勉強会を開いたり、情報交換が活発です。その一つに天敵部会というのがあります。作物に害を与える虫の天敵である虫をハウスに放ち、食べてもらって駆除するという減農薬の取り組みです。いい結果が出てきていますよ。
 加えて、台風などの風速50mにも耐える耐候性ハウスに補助金が出ます。それを利用することで安定した生産ができ、安心して経営ができるのも大きいですね。

Q7.仕事は順調のようですが、ご苦労もあったのでは・・・
 一番大きな災難は、平成3年、就農して間も無くの頃です。近所で空いてる中古のハウスを買い取って、夏の間にペンキを塗って、9月にナスを植え付けしようとした3日前のことです。九州に大きな被害をもたらした台風17号・19号が来熊。出鼻をくじかれましたね。私が買い取った中古のハウス1棟だけが潰されました。卒業して20歳そこそこで、いきなり600万円の借金です。それでも苗はあります。さらに借金をし、自分で設計して、オリジナルのハウスを建て直しました。それは24年経った今でも現役です。

笑顔が爽やかな古閑さん。
物静かながら、内に秘めた負けん気の強さがうかがえる。
交配に適した洋蜂が、ハウスの中で大活躍。
ナスに害のある虫を駆除してくれる天敵の虫。
なくてはならない相棒。
1棟50m×6mのハウスが11棟繋がっている。
先は熊本港、その先には雲仙も見渡せる、広大な田園地帯。
 

Q8.自分で設計もされるんですね?
 機械いじりが好きですね。小さい頃から、いろいろな機械を分解して組み立て直していました。高校は普通科でしたが、バイクにハマりました。レースに出たり、独学でバイクの修理をしたりしていました。大人になってもず〜っと続けたいと思っていました。家業ならそんな時間も取りやすいだろうと跡を継ぎました。

Q9.そうすると、趣味は機械いじりですか?
 もっぱら、コンバインや農業で使う機械ばかりイジっています。家庭を持ち、万が一事故でも起こしたらいけませんので、バイクは諦めました。それでも操るのが好きなので、車を駆ってラリーもしました。それも歳とともに遠のき、子供が大きくなるにつれ、趣味の車も保留です。ずっ〜と我慢してきましたので、そろそろ(いじれる)趣味の車が欲しいなぁって思う今日この頃です。
 先にも述べましたが、7月から8月の初旬は農閑期で、働く人間もリフレッシュ期間です。その期間は、旅行に行ったり家族サービスをするようにしています。普段の休みの日は、二人の息子が野球をしていますので、野球の試合を観戦するのが習慣です。
 いろいろな生き方がありますが、私はよく部活に例えるんです。強豪校の補欠(コマ)でいるより、試合に出てチャレンジできる場でレギュラー(主軸)になる方が面白いという考え方です。

Q10.その面白さ・喜びとは、具体的に教えていただけますか?
 跡取りと言っても若い頃は丁稚です。親からあれしろ、これしろと言われてする仕事ほど、面白くないですよね。でも、この時期に水をやる、こんな肥料をやるといった、一つずつ自分で判断出来るエリアを広げていきました。親との陣取り合戦、勝負ですね。徐々に仕事が面白くなってきました。
 最近では、事業拡大をされるところが多くなってきています。私もそんな考えでした。量を生産し、収入が上がることに喜びを感じていました。それでも、農大での知識を生かし、土壌改良もしていましたので、以前からその品質が認められ、食品関係の方から分けてもらえないかという依頼もありました。しかしJAと契約していますので断っていました。最近になって、飲食店さんとのお付き合いができ、規格外の商品を納入するようになりました。うちの野菜の生産が終わり、納入できなくなった後のことです。その飲食店さんに、お客様からクレームが寄せられたそうです。「野菜の味が悪くなった」と言われ、「なんとか納入できんですか」と頼まれました。収入的には微々たるものですが、素材の良さを認めてもらう、そんな喜びにやりがいを感じています。

Q11.新たな可能性が感じられますね。
 現在、機能性野菜と言われる商品のニーズが高まってきました。就農して以来、常に土壌改良を行ってきた甲斐あって、当園の商品には、アントシアニンや高たんぱく質が多く含まれています。ゆくゆくは、別会社を立ち上げて、そうしたニーズのあるところに販売していきたいと考えています。
 壁にぶち当たることはあります。でもそんな時こそ、新しいことができるチャンスだったり、何か可能性が発見できたりすると思っています。ピンチの後にチャンスあり!です。


Q12.今後はどのようなプランをお持ちですか?
 多くの農家で、旬の野菜を作らない、無い時期に作ろうと言うのが通例になってきています。その一方で、旬の時期(いわゆる路地栽培物)を作る人が少なくなってきています。廃業した農家や後継者不足と言われる農家が、路地野菜を作っているわけですから、旬の野菜が足らなくなってきています。ですので、これからは旬の野菜を作るのが面白いのかなぁ…って思っています。
 今年、10アールの畑で試験的に路地でナスを作ってみました。旬の野菜ですから、ハウスのように交配作業も要らず、自然が育ててくれます。手間もコストもかからないのに単価は変わらないんです。利益率が高いということです。
 茄子部会の中で、年間の秀品率や坪単価の良かった農家が表彰されます。翌年には、その農家にみんなで視察に行ったりして、切磋琢磨して頑張っています。熊本の農業全体の底上げに、また個々の売り上げにつながればいいですね。


Q13.地区理事としての思いを聞かせてください。
 私も、もう10年以上理事をしていますが、そろそろ引き継ぎしたいですね。熊本地区は大所帯で、卒業して10年以上経ったような人たちは、地域や品種別の様々な会に所属し役に就いています。耕志会活動は後回しになって、なかなか機能していないのが現状です。まだ、そうした他の会のしがらみのない、卒業して10年以内の若手を中心とした組織にして、活性化させたいですね。次の世代にバトンタッチするために、できることを模索したいと思っています。
 耕志会の皆様のご協力・ご尽力のほど、よろしくお願いいたします。


         (2015年11月4日インタビュー)

 

 


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