親父から「農業は楽しいぞ!」と言われて育ち、息子にも「百姓はよかぞ〜!」と言いながら育てました。私は長男として自然に家業を継ぎましたが、当時は地元で農業に就く同級生が多く、その仲間の存在も大きかった。思い出深いのは農業大学校を卒業後、就農したばかりのまだ頼りない私に、親父が仕事を任せてくれたこと。剪定など、できることから少しずつですが、これは嬉しかった。自信になりましたね。でも当然、切り過ぎたりする訳です(笑)。そんな時でも「こりゃ切り過ぎだなあ」と、いつでもやさしく諭すような教え方をした親父は偉いと思いますね。その後、結婚した辺りから私にも独立心というか、プライドが芽生え始めました。仕事にも慣れ、家庭ができたことで責任感も違ってきますが、それまでに身に付けたノウハウを自分が堂々と妻に教えたくなるんですよね(笑)。ですから、結婚を機に親離れをすることは、自然な成り行きだと感じています。今後も家族で助け合って、“努力が報われる”農業を、次世代へしっかりと続けてゆきたいですね。

 

9月中旬〜12月末の収穫の最盛期には、早朝から夕方まで「ちぎり(収穫)」、夕方から「選果」、翌朝に出荷という毎日です。合計4町歩の園地からコンテナで一日平均100数十杯のみかんを収穫します。家族全員の助け合いが無かったらできない仕事ですね。最盛期にはさすがに忙しく、数名の方に手伝って頂いています。幼い頃から「百姓のよさ」を聞いて育ち、新規就農して数年が経った今、あらためて農業のやりがいと意義を感じているところです。祖父の代から本格的にみかん栽培に取り組んでいますが、私も人に対して「やさしく教える」人になりたいと思っています。祖父も、父も、そんな人ですから。考え方も参考になり、今のところ同じ方向性ですね(笑)。今後は、妻をはじめ皆が作業しやすいように、果樹の低木化や農道の拡張、それに伴う用地取得といった各種整備を進めていきたいと考えています。祖父と祖母、父と母、そして私と妻、家族一人一人が助け合う農業を誇りに思います。面と向かっては言えませんが、体に気をつけて、これからも頑張ってほしいですね。


●プロフィール
父/宮本裕一(みやもとゆういち)
昭和38年(1963年)河内生まれ。熊本県立熊本農業高校を経て熊本県立農業大学校(果樹コース)卒。宮本家は先代まで網元を営み、裕一氏が幼い頃まで半漁半農であったが、徐々にみかん栽培のみにシフト。先代の「農業は楽しいぞ!」という言葉を聞きながら育ち、迷うことなく家業を継いだ。園地内には樹齢300年といわれるみかんの木もあり、みかん栽培の歴史は古くまで遡る。減農薬及びにがり使用等、独自の栽培管理によって糖度や旨味の向上に成功し、「仕事が趣味」という先代の名前(正広さん)の一字を冠した「宮正みかん」というブランドにて出荷。照れ屋で穏やかな語り口の奥に、みかん栽培への強い情熱を感じさせるこだわりの農業人。一男二女の父。

子/宮本将志(みやもとまさし)昭和63年(1988年)河内生まれ。熊本県立北陵高校を経て熊本県立農業大学校(果樹コース)卒。高校時代は流通の仕事に憧れたこともあったが、やがて家業を継ぐことを決意。農業大学校では、志を同じくする仲間との出会いをはじめ、かけがえのない経験ができたという。近年における地元(河内)での新規就農者は数名のため、農業大学校時代に得た仲間の存在はとても心強く、卒業後も積極的に情報交換を行なっているとか。卒業の年(2008年)は、結納、結婚、出産と、自身の家庭も築き上げ、より仕事への意識が高まり、現在はさらに仕事も家庭も充実した日々を送っている。平成22年12月現在、一男の父。


連絡先:電話・ファックス096-276-0648