数年前に食べた完熟マンゴーの豊潤な味わいに驚き、「これだ!」と栽培を決めた田中広和さん。約30年という柑橘類栽培のベテランだが、その魅力は大きかったようだ。宮崎、鹿児島にて生産農家の視察を行ない、マンゴー栽培の用地も取得。独自の研究を重ねていると、縁あって出会った宮崎大学農学部の山下教授が退官時に研究の成果ともいえる栽培法を惜しげもなく伝授。ポットと露地の利点を組み合わせた縦穴式の植樹法で、効率的にノウハウを蓄積することが出来たという。平成22年春からは息子の雄大さんが加わり、徐々に任せるようになった。「マンゴー栽培は実益を兼ねた息子と共通の趣味かな」と笑う田中さんは、晩酌時に今日一日の報告を聞くのが楽しみ。「息子は専門的に学んでいるからね。私は経験から判断してアドバイスしています。語り合いながら一歩一歩ですね」。





 

宮崎ではマンゴー栽培農家のこだわりや技術力を実際に見て来た、息子の雄大さん。実家に帰って専門的に携わるようになり、あらためて水分管理や果実を受けるネット掛けのタイミングなど、マンゴー栽培の難しさを感じるという。その分、深紅に完熟した果実を収穫する喜びは一入(ひとしお)だ。また、就農して父親の凄さを実感したらしく、「栽培はもちろん、出荷先、経営のことなど、すべて自ら動いていることに圧倒されましたね。人とのつながりを大事にしていることもよくわかりました。越えるのは大変ですが、目標だと思っています」と丁寧に語ってくれた。お互いに経験を尊重しながらマンゴー栽培を行なっているが、「規模拡大や法人化など、自分が参加することで少しずつ実現してゆきたい」と独自のプランも描いている。親子コラボによるマンゴーはこれからも美味しくなりそうだ。


●プロフィール
父/田中広和(たなかひろかず)
昭和39年(1964年)芦北生まれ。熊本県立芦北高校を経て熊本県立農業大学校卒。たなか果樹園代表。父親の代から柑橘類の栽培を手掛け、幼少期より農作業に参加。12才の時に父親が亡くなり、就農後は母親・妻と3人で従事。最初の作物は県立農大卒業後の「甘夏」で、昭和61年に「金峰」を加え、平成元年からは「甘夏」を「不知火」に、平成8年には「金峰」を「はるか」に切り替えて栽培。世の流れを読み解き、平成19年に「マンゴー」の栽培をスタート。研究熱心な人柄で知られ、本場・宮崎にて学んだ息子と二人三脚で手掛ける「マンゴー」は、市場にて高い評価を獲得。現在、平成7年に自ら立ち上げた柑橘類の生産者団体『フルーツ工房会』の代表も務める。熊本県指導農業士。エコファーマー認定。二男一女の父。
子/田中雄大(たなかゆうだい)
平成2年(1990年)芦北生まれ。熊本県立熊本農業高校を経て宮崎県立農業大学校卒。たなか果樹園マンゴー担当。幼い頃から収穫を手伝っており、就農に抵抗はなかったという。高校2年生の頃、父親のマンゴー栽培への挑戦を機に、本場の宮崎県にて学ぶことを決意。2年間で身に付けたさまざまなノウハウを熊本に持ち帰り、父親とともにマンゴー栽培を手掛け、現在ではマンゴー担当として栽培管理から出荷まで全般を任されている。


連絡先:電話・ファックス0966-82-3364